群馬CSC交流戦8月大会 Day1,2-JPT第6,7戦
※Day1は雷の発生によりレース中断の後中止となり、中断時にコース上に残っていた選手達に規定の完走ポイントが与えられた。
Day2 6km×20周=120km
17位 西尾勇人
56位 柴田雅之
57位 西尾憲人
DNF 竹村拓
2020Jプロツアー 個人ランキング
2020Jプロツアー チームランキング
8位 那須ブラーゼン 1,476P
リーダージャージ
レポート
120kmと決して短い設定ではないレースながら、序盤から速いレース展開となった群馬CSC交流戦は、ラスト1周の登りで仕掛けた8名から更に先行を決めた石原悠希 (Hincapie LEOMO Bellmare Racing Team)がJプロツアー初勝利を飾った。
自らの動きから勝負のかかった先行集団を作り出した谷順成は6位フィニッシュとなった。
先行のきっかけを作った谷だったが惜しくも6位フィニッシュ
チームオーダー
前日のDay1は結果として中止となったが、序盤から積極的な攻撃に出たことが仇となり、中盤を待たずに大きく枚数を減らしてしまっていた。このことから、速いレース展開の中に上手く潜伏し、中盤以降におこるレースの大きなうねりに上手く乗っていくことを今レースでは求めた。
那須ブラーゼンの勝利のシナリオは、これまでの5レースと変わらず、如何に最終局面に人数を残し、先行集団に複数名を乗せること。また、そこから更に先行を決まること。であり、渡邊・谷のダブルエースの実力や、他の選手達の底上げに成功した直近のチーム状況を鑑みると、間違いなく上位チームの一角に加われている自信を持っていた。
・エース級は谷と直近のトレーニングで好調な姿をみせていた柴田を指名
・渡邊、勇人はフリーに動き、谷・柴田と共に勝利の可能性のある集団に加わること
・たかし、ひろしは4名を最終局面でサポートすること
・ケイトは唯一の明確なアシスト役として、ポジショニングから牽引、補給を行うこと
・竹村は序盤のポジショニングのみに集中すること
これらをオーダー
今レースから無線機の使用が解禁されたことで、レース中の指示伝達が行いやすくなった。
前日までの予報に反して暑さを感じるほどの気候
無線機の導入によりレース中にチーム間の細かいコミュニケーションが可能になった
託された任務を遂行するため、全メンバーが集中力を高めてスタート
序盤の攻防
やはり非常に高速な立ち上がりとなり、集団は常に縦に長く伸び続けている。各チームが激しく攻撃を続けるなか、柴田、ケイトを中心に集団内で良い位置をキープして逃げを選定しながら、各メンバーのダメージを最小限に抑えるられている。何度も飛び出そうとしている小集団の出入りを少し下がったポジションで見ながら良い対応が出来ており、無線機から「見送りで良い。」という指示が常に送られた。高速なレースに対応できず竹村とひろしが遅れてしまうが、他のメンバーは各チームが消耗をする中良い立ち回り。
アシストとしての任務を献身的に担うケイトの姿は常に集団の前方に
チームの負担軽減の為に司令塔の役割を果たした柴田
身体の各所に痛みを訴えた大志はペダリングに力が入らなかった
中盤戦へ
今シーズンのレースは逃げの選別にかける時間が非常に長く、レースが落ち着く時間帯がおとずれるのが遅くなっている。それだけ序盤の速い攻防の中で対応できる走力が求められるハイレベルな戦いとなっている。
今レースも7周あたりでやっと5名の先行集団をプロトンが見送ってレースが落ち着いた。この時点で既にメイン集団は50名程まで絞られており、攻防の激しさを物語っていた。
宇都宮ブリッツェンが前方に隊列を組上げ牽引を開始、逃げにメンバーを送り込んでいないHincapie LEOMO Bellmareも牽引に同調。マトリックス、キナン、UKYO勢もそれぞれに隊列を形成し、ブラーゼンも消耗を避けるために隊列を組むことを指示し中段あたり陣取る。
この時点で予想される次の展開は、先行集団が吸収される直前にアタックがかかり、スプリントでレースを決着させたくない各チームが激しく動くというもの。宇都宮ブリッツェンは牽引で消耗を強いられながらこれに対応をしなければならず、那須ブラーゼンを含むブリッツェンの後方に隊列を組む各チームは、ブリッツェンへの攻撃の期を狙っている。
ブリッツェンが集団コントロールを開始し、ブラーゼンもチームでまとまる
ブラーゼン勢の中では柴田が無線機などを駆使して常にチームをまとめる司令塔の役割を果たし、チームを有利な状態で守れるように働いている。
集団が一度落ち着いている時間帯では補給などを積極的に摂って行かなくてはならない為、この日唯一のアシストとして奮闘したケイトがチームメイトの補給をサポートした。
一時、谷本人から「不調だと思う」という訴えがあったが、集団内で回復をはかり、補給をとることで最後の勝負には臨めると判断し、谷で勝負するシフトは変更をしなかった。
エースを託されるものへの重圧は計り知れないものがある
レース巧者の勇人はチームの精神的な支柱でもある
激しいポジション争いを避けるための強い隊列はチームにとって大切な要素
厳しいレースの中ではアシストの役割は非常に重要で補給を運搬するのもその仕事のひとつ
強烈な攻撃力と野生の嗅覚を持ち味とする渡邊翔太郎も勝利を狙える選手の一人
更に激しい終盤戦へ
先行集団とのタイム差が20秒を切った15周目の登りでマトリックス勢が攻撃に出たことをきっかけに先行集団は吸収され、先行はマトリックス勢2名に入れ替わった。更に各チームがこれを追おうとして激しい出入りを繰り返し始めた。
局面が終盤に移っていることから、大きな先行集団が形成されそうな場合には見逃せないので、柴田やたかしが前方で反応する。たかしが加わる先行集団がマトリックス2名を捉えて先行しかけたが、ここも「ローテーションで引かずについていくだけ」の指示をチームとして選択した。
良い動きで有力なアタックにチェックを入れる佐藤ツインズ宇志の姿
乱戦を得意とする勇人は集団内潜伏のオーダー
ラスト2周~フィニッシュへ
数名が入れ替わりながら飛び出す場面はあるものの、決定的な先行は生まれないまま、高速なチェイシングをメイン集団がかけ続ける状況でレースはラスト2周へ。
この時点でブラーゼンは勇人、谷、渡邊、柴田、たかしがしっかりとメイン集団内に加われている。
谷は最終周に攻撃が出来るように。勇人は集団がまとまってしまった時のなだれ込み上位狙いに備えて。
たかしは谷の攻撃の前に一度攻撃をする要因として。柴田はこれらをサポート。渡邊はとにかくフリーに。
メイン集団内でも1番の勢力と言って良いくらい枚数をしっかりと揃えられている。
ここまでの対応で多少の疲労はあるものの、好調な動きを見せていたたかしにラスト2周の登りで「先行を狙って登りでアタック」の指示が入る。
ここからは大集団でのスプリントを避けたい那須ブラーゼンは登り区間での攻撃が必要となる。たかしのアタックはカウンターで出たアタックが強力で不発に終わりラスト1周へ。
「谷、最後の心臓破りで昨年勝利したイメージを持って全力でアタック。自信を持って全力で」
「たかしは谷発射の前にポジションを引き上げて」
「勇人はなだれ込みに備えて集団待機」
これらが無線によりオーダーされた。
勝負所の心臓破りの坂に向かう間にもハイペースな集団の中から何度もアタックが散発している。心臓破りの坂の手前の小さい登り区間で渡邊がアタックに出る。谷がたかしと共にポジションを上げて先頭近くからアタックに出ようとするタイミングだった。渡邊のアタックをつぶしてしまう可能性を懸念したたかしが谷を止めようとして一瞬谷が躊躇した。ここにキンテロ(マトリックスパワータグ)が強烈なアタックに出たため、谷も踏み直してアタックを敢行。この動きがきっかけとなりバックストレートには8名の先行集団が数秒のタイムギャップを持って現れた。
谷はきつそうだが、もうここで勝負が決まることが確定的。
耐え抜いてスプリントしてもらうしかない。
ホームストレートに姿を現したのは一人先行する石原
2位争いの6名でのスプリントで谷は5番手フィニッシュ。
勇人、たかし、渡邊が含まれる後方集団もすぐ後方からフィニッシュに向かってくる。ここで激しい落車が発生、勇人とたかしが何とかかいくぐっってスプリント体制に入れたか。チームポイントを考えると2名はなるべく上位を伺いたいところ。
スプリントの体制を整えきれず15位と17位のフィニッシュに終わった。
最終局面で優勝を争う8名に谷順成の姿
谷を前方に送り込んだことで、勇人と宇志は後方集団でスプリント体制
優勝までもう一歩のところまで詰め寄った谷順成
谷はエースとしてすべての力を尽くした
総括
前日の積極的な姿勢がチームの崩壊をうみかけたことから、各チームの動きを冷静に見ていく作戦に切り替えたことは非常に効果的だった。プロトン内でもブラーゼンの力は上位にあることは間違いなく、今レースでそのことを証明することが出来たし、自分達にとっての自信ともなる良いレースだった。各選手がしっかりと与えられた持場で仕事を全うし、勝利目前の局面までエースを送り込むことにも成功した。更にしっかりと作戦や展開がはまりさえすれば、勝利も上げることができる。次戦の広島のコースは実力を問われる非常に厳しいコースだが、ブラーゼンの各メンバーはここにしっかりと対応をしてくれるものと期待できる。
チームポイントの加点に成功した3名が一足早くフィニッシュ先の補給所へ
Text:若杉厚仁 Photo:樋口峻明