大分いこいの道クリテリウム
1km×45周=45km

リザルト

7位 渡邊翔太郎
12位 佐藤宇志
17位 谷順成
34位 柴田雅之
DNF 西尾勇人
DNF 佐藤大志
DNF 竹村拓
DNF 西尾憲人

詳細リザルトはこちら:https://jbcfroad.jp/result/92/375/

レポート

高速なクリテリウムコースでスプリント勝負に持ち込まれた大分いこういの道クリテリウムは、他の選手を寄せ付けないトップスピードをみせた沢田桂太郎がチームにとって今季初勝利となる優勝を飾った。
那須ブラーゼンは高速で伸びきった集団内で粘った渡邊が7位に食い込んだ。

※大分遠征はスタッフ人員の都合で写真でのレポートができず申し訳ありません。

チームオーダー

コースはいたってシンプルながら、コーナーの度に集団が縦に伸びて後方に取り残されると周回を重ねるごとに消耗を強いられていく。前方へのポジショニングやコーナーからの立ち上がりでバイクを加速させる技術が問われる。
那須ブラーゼンとしては、最終局面で連携できるメンバーは、勇人、渡邊を最後のスプリントでもがける位置まで引き上げてなだれ込みを狙う。柴田や谷などに余力があれば途中で独走狙いのアタックを敢行する可能性もあると打ち合わせた。
通常のレースで設定している番号はセットなし。序盤からフル加速で前方に上がり、組織的なポジショニングで消耗をさけ、残ったメンバーの余力次第でチームに舞い込むポイントが大きく変わってくる。

序盤の攻防

阿部(宇都宮ブリッツェン)が1周目から積極的に前に上がっていく姿が見えた。
ブラーゼンも複数人の選手が先行の意志をみせる場合は前方に上がっている柴田を送り込める体制。やがて阿部、大前(愛三工業レーシングチーム)の2名の先行集団が形成され、メイン集団はマトリックスパワータグのコントロール下におかれたため、ブラーゼンは全員がメイン集団に待機してしばらくの硬直状態に入る。

中盤戦

那須ブラーゼンが課題としている組織的なポジショニングはレース毎に試みるが、今回も柴田が前方に単騎でポジショニングしているだけで、他の選手が上がってくることが出来ていない。集団内のポジショニングは力尽くで前方に上がればとれるというものではなく、ライバルチームの選手達による許諾によって自然と位置付けられるため、プロトン内でのリスペクトを集められていない那須ブラーゼンの各選手達は自然とポジションを下げてしまうケースが多い。

無線では柴田をターゲットにポジショニングをすること。立ち上がりの苦手な選手達に、「アウトコースにラインをとる」、「一旦車間を切ってから加速してコーナーに入り立ち上がる」などの技術的な指示がなされるが、クリテリウムないでは個人の走力と技量に頼るほかないので、有効な戦術的指示はなかなかすることが出来ない。

那須ブラーゼンの各選手はアコーディオンの様に伸び縮みする集団内で段々とスタミナを削られているようだ。
勇人が腰に痛みを感じて後退した為、なだれ込みは渡邊、宇志あたりが担うことが予想された。

終盤戦

阿部&大前の先行ペアを段々とマトリックスパワータグトレインが率いるメイン集団が追い詰め始めた。
ゴールスプリントまで距離を残して吸収してしまうと集団内に混乱が生じてマトリックスにも不利な状況となるため、タイム差が縮み切らないように2名の先行は等距離のコントロール下におかれている。

ブラーゼンは柴田が終始メイン集団の10番手以内に位置取っているため、メイン集団が2名を捉える間際で単独アタックをして欲しいと指示する。メイン集団が逃げ集団を捉えるタイミングで一度集団が緩み新たな主導権争いがおこる。そのタイミングでは「お見合い」が生じる可能性があり、集団スプリントでは分の悪い那須ブラーゼンが勝利を狙うとするとこの隙をつき柴田が先行するようなシチュエーションに持ち込む必要があった。

しかし、結局吸収のタイミングと訪れたコーナーのタイミングが悪く、はっきりと柴田に加速を指示しないままメイン集団は2名を吸収してスプリント前の位置取り争いに突入してしまった。また、柴田も想像以上の消耗をしていたようで、最終のスプリントに向けて加速した集団から脱落することとなった。

フィニッシュへ

超高速状態に突入したメイン集団では飛び出すことはおろか、ポジションを上げることさえ容易ではない。
高速で一列を維持しているメイン集団では至る所で中切れが起こり、中切れをうめるのは力を使ってしまうため、なるべく中切れの影響を受けない位置に陣取りたいが、マトリックスパワータグが前方を固め、更には平地のスピード能力に長ける有力勢が前方に上がり切ってしまっていて、好位置に那須ブラーゼンは入り込むことが出来ていない。

この時点で渡邊は15番手あたりまであがってきているが一番中切れの影響を受ける位置で何度も中切れをうめていた。宇志はその後ろでポジションを維持している。谷は更に後ろで連携が難しそうだ。

最終周に入り、スプリンターを擁するチームのアシスト陣が渾身の牽引で次々と力尽きていく。
ブラーゼン勢はとにかくポジションを維持しながら少しでも先を目指すしかない。

最終コーナーの手前は緩やかな登り区間となっており、脚が物を言う区間。この区間で渡邊が苦しみながらポジションを上げていった。前は各チームのアシスト陣が脚を止めている姿もあり、渡邊も1ケタ台にいる。「翔太郎頑張れ!そのまま我慢してもがき切れ!」と無線で鼓舞する。チームメイトからも渡邊の無線にしきりに声援が送られる。そのまま7位でフィニッシュを迎えた。

宇志も悪くない位置からスプリントが出来ているが、集団は既に細切れに伸びきって速度を上がり切っているため、ポジションを維持するか、前走者を交わすことぐらいしかできない。谷が思いのほか後方から伸びてきている。後で確認したところ、12位、17位でのフィニッシュだった

総括

那須ブラーゼンは兼ねてからクリテリウムでの上位進出は大きな課題だった。ポジショニングの問題や、平地のスピード、スプリント力など、総合的にこのレースでも上位進出に関しては苦しいものと予想していた。レースがはじまってからも、決して優位なポジションに各選手が入れているわけではない。また、有効なチーム隊列を組めていたわけでもなかった。しかし、各選手個々にはなりながらも、課題であるポジショニングについてレース中にも頭をひねりながら、何とか消耗を避けて走っている姿があったと思う。その中でも、柴田が前方4~10番手あたりを常に陣取ってチームメイトのターゲットとなることが出来ていたことは非常に良かったと思う。これがチームメイトの消耗を大きく抑えたとまでは言い難いが、本人にとってもチームにとっても、この位置でレースができるという手ごたえを感じられたことはとても良い経験値となった。結果的に、実力のある渡邊、宇志、谷がフィニッシュした位置は想定を超える良い位置だった。

逆に、引き続き課題も確認することができた。渡邊はこの日示した爆発力をもってすればもっともっとクリテリウムにおいても上位進出が可能だと感じた。優位な位置にポジションをとるには、周囲の選手達からのリスペクトと、本人が持ち合わせる技術と嗅覚が必要になる。これらの要素が兼ね備えられればクリテリウムの勝利すら見えるような位置で走ることができるだろう。これらのことが組織的に実行できるようになれば、上位に複数名を送り込める状況も作り出すことができるはずだ。

チーム総合に目を向けると3名が想定以上の上位に食い込んだこと、更に、翌日のレースに目を向けてポジティブになれたことでこの日は前向きに終えることが出来た。