10月4日(日)
おおいたサイクルロードレース
4km×25周=100km
リザルト
19位 谷順成
24位 佐藤宇志
DNF 西尾勇人
DNF 佐藤大志
DNF 渡邊翔太郎
DNF 柴田雅之
DNF 竹村拓
DNF 西尾憲人
詳細リザルトはこちら:https://jbcfroad.jp/result/93/376/
レポート
大分2連戦の2日目にあたるおおいたサイクルロードレースが昭和電工ドーム周回コースで開催され、終盤にメイン集団から飛び出した3名によって争われたスプリントを、この日チームによってレースを制圧していたマトリックスパワータグのホセ・ビセンテ・トリビオが制した。
那須ブラーゼンは谷順成が粘りの走りを見せて、チーム総合において重要なポイント90Pが与えられる19位でフィニッシュした。宇志も中盤に消耗を強いられながら辛抱の走りで24位に入り45Pを獲得した。
※大分遠征はスタッフ人員の都合で写真でのレポートができず申し訳ありません。
チームオーダー
1渡邊
2たかし
3谷
4柴田
5ひろし
6ケイト
7竹村
0勇人
番号はあくまでも終盤に向けて残れたメンバーの中での優先順位で、かつそこまでたどり着いた際の脚の様子で、意志疎通をして決める。とにかく全員スタートから全開で先頭を取りにいって、そのまま3.6周の中間ポイントを自力で取りに行くつもりで。序盤の攻防で討ち死にしても構わないのでとにかく先行。
前日のクリテリウムでのコンディションを加味し、上記の様な編成を敷いた。
とにかくこのコースはテクニカルで立ち上がりが多く、集団が長く伸びて後ろに取り残されればレースさえさせてもらえないうちに脱落を強いられる。先行する意識を高く持って走る“攻撃の姿勢”が自然に防御につながると判断し、このような方向性とした。
しかし、このコースは自分自身で走った経験がなく、且つスタッフとしても立ったことの無い現場だったため、選手達からの情報を元にイメージは固めながらも、「なるべく指揮者として、指示を受ける選手達が迷わないように」ということだけを重視してレース中の指示出しには臨もうと考えていた。
序盤の攻防
各チーム時間前からコースインを待つ姿が目立つ。やはり全チームが立ち上がりからのハイペースと、コース特性による消耗をしないように前方で走りたがっている様子。那須ブラーゼンもミーティングで確認した通りほとんどの選手が前列に並ぶことが出来た。並び順でレースが決まってしまうというのも特殊な環境ではあるが、しっかりと勝負してくにはこれらの要素には組織的に対応をしていかなくてはならない。チームに緊張感が無ければ「前に並ぶ」という意識的な部分だけでも勝負から除外される可能性すらある。チームの持っている緊張感は十分このレースに対応するレベルになっている。
スタートが切られたと同時に各選手スプリントをするように坂を駆け上がっていった。ブラーゼンの各選手も悪くない位置に見える。
1周目から中切れによって遅れることすらあり得る。立ち上がりの1周目の登り区間でどの位置で帰ってこられるかを非常に重要視していた。
ライブ配信の環境がかなり良いことから、選手達には見えない客観的な観察を指示に織り交ぜることが出来る。ライブ配信の画面を投影するスマートフォンを注視しながら、S/F地点手前の補給地点で待機する。この区間は高速の下り区間から180°折り返して登るレイアウトになっており、選手達のポジショニングも含めた様子がよく見える。前日に好調な姿を見せていた渡邊が先頭で立ち上がってきた。「翔太郎、後ろの選手を待ちながら先行できる準備で行こう」と無線に声をかけた。が直後、目の前に差し掛かった渡邊がバイクを降りた。「パンク!」と言っている。どうやらちょうど目の前でパンクをしたらしい。パンクした後輪の交換に手間取り、なんとか渡邊をコースに戻したが、1~2周目のハイスピードで進んでいる集団との距離が少し空いてしまった。この時点でエース級の渡邊を失ってしまう。
他の選手達は順当にポジションをキープし、メイン集団内で良い動きをしている。
柴田が前方をキープし、谷、宇志、大志、憲人らが積極的に先行の為の出入りを繰り返している。そうしているうちに集団内の選手の数は大きく減っていた。渡邊を失ったことは非常に残念だが、序盤の攻防はこれまでのレースの中でもかなり良い形で立ち回れている。
谷が有力な先行集団を形成しそうになるが、マトリックスのマンセボが先頭に立ってこれを吸収。
入れ替わりで憲人が3周目完了のポイント賞に向けて登り区間で加速をし、S/Fラインを先頭通過。(ポイント賞のポイント付与は完走した選手にのみ与えられる)攻撃が最大の防御と考えていたチームとしては良い動きであり、実際にこの動きを追うようにメイン集団も加速をしたため、後方では遅れる選手が続出した。
中盤戦
中盤を待たずに、メイン集団は5周目あたりまでで40名ほどにまで絞られている。那須ブラーゼンは渡邊を除いてここに全選手が含まれており、竹村、憲人は消耗して厳しそうだが、依然として谷、勇人、宇志、大志あたりは前方での展開に備えることが出来ている。チームとしては非常に良い状態。
キナンサイクリングチームを中心に先行をしたい選手達がしきりに動いている。ブラーゼンもここに同調して、マトリックスが率いるメイン集団から先行した上で、自然に消耗を強いられる大集団に残らないように前方での展開を指示し続ける。
6,7周目に入り、勇人、宇志、大志が良い動きをしている。「この対応を続けていれば時期に出来る勝ち逃げに乗れそう。」と頭をよぎる。このレースでは後方待機のオプションは設定していなかったため、この段でも「どんどん前を目指して上がっていこう」「登りの前でポジションを上げて、登りで攻撃する選手達の流れに乗って前方で展開しよう」と声をかけ続けた。
谷は序盤の動きで消耗して一旦後ろに下がっていてなかなか上がれない状態になっているようだ。
勇人が有力なメンバーと先行しかけたが、これもマトリックス勢が牽いて吸収。この後に出て行ったアタックがメイン集団から容認され、パラパラと数名ずつ飛び出していった。キナンは複数名。マトリックスもホセを送り込んできている。「まずい。悪くないメンバーが揃っている。この状況だとマトリックスも牽かないはずなのでレースが終わってしまうと頭をよぎる。
慌てて、「勇人、宇志を連れて次の登り区間で全開でアタックしてほしい」と指示。この時点で前方には8名の先行集団が形成されており、有力選手達が揃っていた。ここまで上手く立ち回っておきながらブラーゼンがメイン集団に取り残されてしまった。「きっとこの先行集団から勝者がでる」という判断が揺るがないまま登り区間に突入。勇人が加速し、メイン集団は散り散りになっている。宇志は良い位置についているので何とか届くかもしれない。
しかし、登り区間をクリアした先で危険を感じたマンセボがメイン集団を牽引してきた。勇人と宇志らは小集団を形成しながら先行を目指していたがあっという間にキャッチされてしまった。先行集団8名→マトリックス率いるメイン集団の構図に。
結果的に勇人と宇志に登りでただ脚を使わせただけになってしまった。
後から分析をすれば、この場面もマンセボを中心にレースが動いており、勇人と宇志を動かしたことでマンセボの力を引き出すだけの結果になってしまった。自分達から動かずにもう少し冷静に次の動きを待つべきだったかもしれない。
終盤戦
登りで消耗させてしまった勇人は終盤戦を前に速度の上がったメイン集団から遅れてしまった。
他のメンバーも速いレース展開に苦しみ遅れており、谷は集団後方で、宇志もポジションを前方にはいるが、それぞれにかなりきつそう。ブラーゼンは一気に窮地に陥ってしまった。
ブラーゼンとしてはこれ以降はとにかく谷と宇志に耐えてもらうしかない。
毎周回に緩むポイントでポジションを上げてなんとかしのぎ、ポイントが少しでも多くもらえる着順でゴールを目指してもらう。コース上にいるのは30名ほどに絞られているため、今の谷、宇志の状態だと15~19位の中になんとか入ってもらいたいところ。
フィニッシュへ
メイン集団が先行集団を捉えに行く過程で耐えきれなくなった選手達が次々と遅れていく、宇志、谷の順で遅れてしまった。25番手前後。このまま遅れ続ければ完走すら危うい。
「谷、前の選手もどんどん遅れてる。谷の耐久力なら追いつくからキャッチしながら前を目指そう」と声をかけるのが精いっぱいだった。
前方ではアイサン・伊藤、マトリックス・ホセの2名にブリッツェン・阿部が飛びついたという情報。メイン集団も遂に動きを止めてこの3名に勝負が絞られた様だ。
谷が脱落していっている選手達をどんどんパスしている。ポイント獲得の望みを託して谷の奮闘を見守る。宇志も30番手あたりで苦しみながらゴールを目指している。
ホセが阿部とのマッチスプリントを征したようだ。
レースはマトリックスに完全に制圧された。
谷が最後の登りに差し掛かった。必死にペダルを踏みこみ、前方に数名いる選手達を交わしてゴールできたようだ。宇志も登り区間で何人かを交わしてフィニッシュ。
総括
渡邊を失ってしまったことは不運だったが、立ち上がりの攻防はこれまでのレースの中でも一番の出来といえた。しかし、中盤の最も要所といえる場面では手数が足りなくなってしまい、更にその先で起きた大きな逃げに対して「先行有利」の考えから焦って選手達を動かしてしまったため、この日好調だった勇人、宇志を消耗させてしまった。
今年のJプロツアーはマンセボが参戦する前と後では大きく様相を変えており、今回も冷静にマトリックスパワータグのでかたとマンセボの脚色を探る必要があったが、柔軟性を欠いた作戦決行がブラーゼンの各選手達の脚を削いでしまったことは非常に残念だった。
しかし、ポジティブな要素も少なくはなかったと思う。
重要な局面で切れる手札が少なかったことは残念だったが、序盤はしっかりと自分達の行うべき走りが出来た。結果的に各選手達を消耗させてしまったかもしれないが、序盤の速い攻防の中で、ただ消耗しない位置を取りに行くのではなく、自分達から飛び出していく姿勢を持ち続けたことは各選手の良い経験値となった。
また、有力な先行に対してもブラーゼンの起こしたチャレンジによって先行集団を視野の中に捉えることができた。この動きが無ければこのレースにおけるマトリックスとマンセボの動きが明確に浮き彫りになることはなかったかもしれない。その意味では、この札を切らせたのはブラーゼンの仕事だったと言える。
決して好調じゃなかった谷の奮闘は目を見張るものがあった。残り2戦で6~9位までの混戦において、このレースでの獲得ポイントは非常に重要だった。チームの為にポイントをなんとしても取らなければならないという気迫がにじみ出ていた。宇志も、同様に、遅れた後もポイントをしっかりと獲得する為の走りにシフトして耐え抜いてくれたことは非常に良かったと思う。
次戦が最終戦になる。
各レースで様々なチャレンジを行い、各選手達の経験値がチームに“形”をもたらしつつあるように感じた。
最終戦にして最大ポイントが設定されているロードチャンピオンシップでは、この“形”を確かな結果に結びつけなくてはならない。チームランキングは5~9位が接戦状態にあり、少なくとも7位までの確保と、願わくば6位を取るための上位進出の動きが欲しい。
残る1週間にも最後の修正のチャンスがある。最大限の努力でチームとしての結果を導き出したいところ。
Text:若杉厚仁