那須ブラーゼン所属の下島将輝選手が今シーズン限りで現役を引退することとなりましたのでお知らせ致します。

下島選手は、大阪経済大学卒業後、コラッジョ川西在籍を経て、2016年当時チーム設立4年目だった那須ブラーゼンに加入し、5シーズンを那須ブラーゼンで過ごしました。プロデビューイヤーである2016年には非公式戦ながら京都美山ロードレースでの優勝を皮切りに、Jプロツアーでも表彰台を射止めるなど、トップスプリンターへの成長が切望されていました。しかし、以降は度重なる怪我や不調に悩まされ続けてきました。そんなさなかにあっても、地域密着型チームとして那須地域に定着しつつあった那須ブラーゼンの屋台骨を支えるキャプテンとして自身のパフォーマンスのみに捉われず、チーム発展の為に力を尽くしてきました。この度、その戦いに区切りをつけ、現役を引退する運びとなりました。

 

以下、下島選手のコメントと若杉社長のコメントです。

下島将輝選手コメント

「 今シーズン限りでチームを退団、そして選手を引退することを決断いたしました。
直接ご挨拶しなければいけない方が多いにも関わらず、このような形でのご報告となってしまったことを大変申し訳なく思っています。

今季は自身の年齢と現在の実力を考慮し、来年以降選手を続けるか否かをハッキリさせると心に決めてスタートしたシーズンでした。そうした中での連続するレース中断により、目標を見失いかけ、自転車に乗ることが徐々に苦しいものに変わっていきました。なんとか心の炎を消すことなく準備していましたが、遅れて開催された公式戦開幕以降、原因不明の脚の痛みにより不調が多くなり、自分自身を責める時間が長く続いてきました。
これまでのように逆境を乗り越えるためのエネルギーは残っておらず、来季を戦う自分の姿を想像できなくなってしまったため、選手を引退することを決断いたしました。

まだまだ選手として未熟な自分が、最年長として走る現在のポジションには難しさを感じることが多く、チームに迷惑をかけることも多々ありました。それでもチームに関わる方々は、いつも自分の味方になってくれ、あたたかく接してくれました。大好きなロードレースを戦い、自分自身を磨く場所を作ってくれたチームスタッフ、チームメイトには感謝の気持ちでいっぱいです。多くの人に愛される那須ブラーゼンで選手生活を送れたことは本当に幸せでした。最後になりますが、チームをサポートしてくださったスポンサー、サプライヤーの皆様、応援していただいたファンの方々、5年間本当にありがとうございました。

今後についてはハッキリと決まっていませんが、自信を持って前に進み続けようと思います。」

若杉厚仁社長コメント

「この度、また一人のレーサーをこの那須ブラーゼンから送り出すこととなりました。ここまで一貫して那須ブラーゼンに所属し続け、チームと共に戦い続けてくれた下島選手に敬意を表し、また別の道へと踏み出すその姿を応援し続けたいと思います。

思えば、加入初年度だった2016年には一気に頭角を現し、非公式戦の優勝を含めて光る才能を示してくれました。中でも、恵まれた体格から繰り出されるスプリントは高いトップスピードと持続力を持ち合わせていて、「ブラーゼンでまた一人大きな才能の発掘が出来たな。」と手応えを感じていました。

明けた2017シーズンは「エーススプリンター」に抜擢され、ノープレッシャーで走っていた2016年とは打って変わったポジションを任されますが、特にクリテリウムにおいては重圧をはねのけて、有力チームがトレインを形成する中に割って入ってシングルリザルトを量産するなど、チーム内での確固たるポジションを確立すると共に、スピードレースにおけるチームの支柱として、また一つステップを上がった姿がありました。競技のキャリアは浅いながら、着実に実力をつけ、経験を積み、大きくなっていく背中を頼もしく感じていました。

しかし、下島選手の体を異変が襲ったのは2018年シーズン開幕前のことでした。オフシーズンに重点的に取り組んでいた乗り込みの疲労からか、膝、腰を相次いで故障し、戦線を離脱すると、うまく波にのれないまま半シーズンを過ごします。シーズン中盤にかけてはなんとか調整をして存在感を示したレースもありましたが、本来のスプリントの切れなどは鳴りを潜めていて、多くの葛藤と試行錯誤があった様に私の目にも映っていました。本人の元来の性格から、周囲に心配をかけまいと努めて明るく振舞い、チームのムードを和やかにする姿は常に変わらないものでしたが、レースやトレーニングの度に現れる体の変調や故障の兆候に翻弄されながら戦っていたのだと思います。

昨シーズン(2019)には更にこの不調が大きな波として下島選手を襲っていました。チーム体制の変更からキャプテンとして(キャプテン就任は2018年)、よりチームを統率することを要求されながら、自分自身の不調とも戦わねばならないシーズンでした。肉体的にも精神的にも非常に苦しいシーズンであったと思います。そして明けた今シーズンは奇しくもコロナ禍に見舞われ、復調を心に誓って挑もうと意気込んでいた下島選手の想いを引き裂いてしまいました。

5シーズンという長きにわたって、自身に向き合いながらもチームの為に尽くしてくれる姿を見ながら、復調してまた表彰台に立つ雄姿を切望していましたが、最後はこのような難しいシーズンの中で翻弄され、選手生活に区切りをつけなければならなくなったことが無念でなりません。

自身のキャリアに終止符を打つ選手達の無念は計り知れないものがあります。残酷な勝負の世界において、キャリアを順風満帆に全うするアスリートは上位のほんの一握りです。私自身もまたキャリアを全うできず道半ばでレースを降りた人間の一人でした。下島選手がレーサーとしてのキャリアの大半を過ごしたこの那須ブラーゼンで、苦しみ悩みながら戦い続けてきた姿を常にこの目で見てきました。すべてをささげてきた競技に一線を引くことにはなりますが、長い間自身と向き合ってきた下島選手であれば、また別の道を歩みながら大きなチャンスをつかんでくれるものと期待しています。

5シーズンお疲れ様でした。那須ブラーゼンを共に育ててくれてありがとうございました。」

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自身の不調と2018年から向き合い続けていた

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キャプテンでありエーススプリンターである重圧も下島選手の背中にはのしかかっていた

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コロナ禍に翻弄されながら開幕した2020シーズン

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チームからは3名の出走ながら3位に食い込んだ2016年大分いこいの道クリテリウム下島将輝選手

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2016年はデビューイヤーにして表彰台の頂点も見えていた