記念すべきJCL開幕戦の勝利を誓ってスタートした那須ブラーゼンは、終盤に決定的な6名の先行を許し大惨敗の結果を受け止めることとなりました。
リザルト
優勝 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
2位 西村大輝(宇都宮ブリッツェン)
3位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)
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17位 谷順成
19位 渡邊翔太郎
リーグ公式リザルトはこちら
https://jcleague.jp/race/2021/0327RR_Result.pdf
ダイジェストムービー
チームオーダー
<スターティングラインナップ>
No.1 新開隆人
No.2 谷順成
No.4 西尾勇人
No.5 柴田雅之
No.6 渡邊翔太郎
No.10 佐藤大志
那須ブラーゼンとしては、「コースはフラットでスタミナの差が出づらいレイアウトながら、150㎞の長丁場ともなると実力差が出るはず」と読み、総合力の高い谷、渡邊を擁するチーム力を持ってすれば自然に絞られていく勝負集団内に複数名を残すことが可能と自信を持って臨んでいた。
宇都宮ブリッツェン、キナンサイクリングチーム、チーム右京相模原と対等にやりあえる第4のチームは那須ブラーゼンであり、この3チームに対しても6人:6人の能力バランスは優位であると考えていて、「優勝も狙えるはず」と考えていた。
谷、渡邊には最終の勝負を託すことになるが、序盤の攻防は全員で労力を分散してこなし、局面が進むにつれて絞られていくであろう人数の中で何を実行していくべきか都度無線を中心としたコミュニケーションで確認をしていこうという方針でスタートした。
序盤の攻防
序盤は各チームのにらんだ通り、逃げを選定するための攻防が続き出入りの激しい展開が続く。
ブラーゼンとしては、6名が労力を分散してアタックに対応しているが、前方に配置するメンバーの厚みが増減する場面があり、対応の仕方の波が少し気になった。これは経験値と連携がものをいうところだが、序盤の攻防においてはまだ致命的なミスに至ってはいなかった。
小康状態
1時間程度のアタック合戦が続いたのちに3名(右京相模原、広島、福岡)の先行が決まり、主要チームが束ねるメイン集団が容認したことでタイム差が拡張。最大2分30分程度までの推移を許される先行が続いた。
那須ブラーゼンは先行が決まってまもなく、スパークル大分とのコミュニケーションによって協調を決め、2名ずつの牽引役を出し合うことで集団コントロールを始めた。脚質を加味して柴田・新開を送り込むことを決める。経験豊富な柴田に牽引力に定評のある新開を預け、安定的なコントロールを担えたと思う。
スパークル大分とは12月の時期から交流も深めていたこともありチーム間のコミュニケーションもしやすかった。(各地域に散らばる地域型チーム同士の交流はレース外の方が色濃いかもしれない。)且つ、那須ブラーゼンとしては初戦のうちに「しっかりと仕事をするチーム」としてポジションをある程度確立しておきたい思惑もあった。
レースは10周を経過し、穏やかに後半戦へ。
混沌から突如勝負所へ
レース距離が半分を消化したころ、宇都宮ブリッツェンが隊列を組んで上がっていく姿が映像に映った。
ブラーゼンの選手たちはまだこの姿を認識していないが突然まとまったブリッツェントレインを少し不審に感じた。タイム差は2分30秒近辺を推移していてもうしばらく小康状態が続くことを予想していたころだった。その方がレースはシンプルで計算しやすくなるからだ。
ほどなくして、谷の無線から「ブリッツェンが集団戦闘で仕切り始めた。」と連絡が入った。
「ブラーゼンも引き続き牽引に参加する。柴田、新開を出し続ける。」と無線で指示した。勇人が「新開とかわります。」と無線を入れてきた。局面が難しくなっていきそうだったので勇人の判断が正しいと受け止め、新開を一度休ませることにしてブリッツェン、スパークルらとの協調に。
タイム差が縮小し始めて1分30秒。45秒。一気に縮んできた。
タイム差が縮まるにつれて各チーム入り乱れてきていた。
レース距離はまだ50km以上あるので「少し早いな。」と思ったが、「厳しい展開の方が自分たちの脚を生かせる。」と思い、宇都宮ブリッツェンの動きと、同じくレースを厳しい展開に持ち込みたいキナンサイクリングチームの動きを見ながら、その流れにゆだねることとした。
決定的なミス
3名の逃げが吸収された。
キナンが猛然と攻撃を開始していた。高速牽引とアタックを繰り出し、時折チームメイトを『蓋』にしながらメイン集団を揺さぶっている。
終盤近くなったこの状況でこの速度を維持することは実力者にしか許されない。この展開の中から先行をうてる選手たちはこの集団の中でも上位に位置する強豪選手達だけだ。
激しい出入りが繰り返される中でブラーゼンも各選手が対応しているが段々と歪みが生まれているように見えた。谷が8名程度のアタックに反応して引き戻された後、ブラーゼンが一気に集団前方の厚みを失った。新開が辛うじて10番手程度を張っているがここまでの牽引とこの先の展開を考えるともう一枚ほしい状況。大志も攻防の中で立ち回って中断に下がっていた。柴田も中段より後ろに見えた。谷、渡邊、勇人が後方にいる。「翔太郎。上がってきてほしい。この後キツイアタックが入ると決まってしまうと思う。」ここまでの疲労度合いを加味して渡邊に声をかけた。
このやりとりのあと、6名が先行し始めた映像が映った。
いかせてしまった。宇都宮ブリッツェン、チーム右京相模原、キナンサイクリングチームのユニフォームが確認できた時点で行かせてはいけないメンバーが乗っていたことを悟った。集団も一気に動きを止めたように見えた。
「柴田、新開で前方に上がって牽引。この集団はもうブラーゼンしか引けない」とオーダー。
続いて「これは勝ち逃げになる。ここに入れなかったらレースが終わってしまうから順番に脚を使いきって良い。新開、大志捨て身で牽引して谷、翔太郎をブリッジさせる。届かなかったらレースが終わると思う。討ち死に覚悟で全員でやろう。」と無線で連絡。ちょうど補給所且つのぼりの区間に先行6名が現れたので肉眼で確認できた。15秒後、勇人を先頭にブラーゼンのトレインが現れた。コースのレイアウトとタイム差を考慮して、先に勇人が仕事をするという判断は早くて正しかったと思う。新開、大志に意図が通じて体制を整えている間に傷がもっと開いていたはずだからだ。
勇人の牽引が終了した直後、谷・翔太郎のコンビが発射。ホームストレートで6人(先行):2人(谷・渡邊)の構図が映像に映った。
少し距離がある。でもこのタイミング以外になかった。他のチームがつけていないことを考えると相当強烈なブリッジだったはず。
補給所から確認できるコーナーで確認した時には6秒程度まで縮めていた。しかし前は6名が全開でローテーションをしている。
「行け!届く!追いつけるぞ!」と声をかける。
なだらかな下り区間に入った。再度映像を確認できた時には谷が離れて渡邊が単独になっていた。「追いつけなかった」と悟ったと同時に想定以上の最悪の事態に陥ったことを突き付けられた。後手を踏んだ上にすべてのカードを切り切ったが実らなかったのだ。
最終盤へ
集団に戻った谷・渡邊は、限界まで追い込んだ直後で第2集団についているだけが精いっぱいの状態になってしまった。大志、新開もここまでの消耗で遅れてしまっていた。
先行6名は快調にレースを進めていた。
「谷・翔太郎。もう7位狙いしかなくなってしまったけどできる限りのなだれ込みをしよう。」と無線を入れたが、『勝利』だけを念頭に入れてすべての力を投じた後だったのでもう余力がないことは明らかだった。
それでもチャレンジして
最後の上り区間で谷が7位争いの中でアタックを仕掛けていた。
結果的には飲み込まれてしまって17位に。渡邊は遅れることのないように耐えて耐えて19位
『勝利』を掲げるまでの自信をもってスタートした開幕戦を大敗で終えた。加えてチーム総合も9位となり、最悪のスタートとなってしまった。脚を使い切ってしまったアシスト陣はゴールにさえたどり着けない状況に追い込んでしまった。
総括(若杉コメント)
このレースへの意気込みは並々ならぬものがあった。12月から現チームの強化には取り組んできていて、強化に必要な要素を積み重ねられていた。出走メンバーは順調にパフォーマンスとコンディションを上げた6名を揃えられていたことから、レースが近づくにつれて「開幕戦では優勝をさらい、年間複数勝利とJCL初代チャンピオンを奪取する」と口に出して選手達に伝えてきた。実際に本人たちもそれが実現できる実力を自身らに感じていもいたはずだった。しかし実らなかった。経験、展開、連携、状況判断、嗅覚まで兼ね備えてはじめて勝利は手繰り寄せられるものであって、今の那須ブラーゼンにはこれらが決定的に欠けていた。そんな中で、「上位進出」ではなく“勝つ”ためだけにすべてのチャレンジを序盤から実行し、全員がその意志のもと任務を全うした。ステージを大きく上げたチャレンジを遂行できたことは大きな収穫があったこととは思うが、同時に「大敗」も背負うこととなってしまった。
結果的に、リザルトにおいて最悪の発進となってしまったが、自分たちのチームがプロトンの中で戦える脚をもっていることも確認をすることができたことも事実だった。勝利、そして総合成績に繋げていくにはもっともっと緻密で綿密な詰めの作業が必要なことも体感できたことは、チームとしての大きな成長であったとも思う。これを初戦で感じられたということは収穫であったといえる。
長いシーズンが開幕した。着実に1勝を狙い、総合優勝ももちろんあきらめていないので、更なるチームの飛躍的な成長を皆さんにお見せしたい。明日はまだ第2戦のクリテリウムが残っているし、切り替えて今できる全力をぶつけてみせたいと思う。